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カワトンボの頃‥

谷は花の端境期を迎え沈んで見えます。
すっかり強くなった夏の日射しが、木々の陰をいっそう暗くするせいでもあります。

そんな光と影の間を、急くでもなく、大きな翅をひらつかせて自在に行き来する‥
大好きなカワトンボの季節です。


カワトンボの頃‥_e0070545_22094411.jpg
カワトンボはお気に入りの場所を持つように思います。

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美しい翅を閉じて止まるのは枝先などではなく、広い葉の上です。

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同じ葉に同じ個体が何度も戻るのを、そして長く留まるのを見て来ました。
顔を洗うようなしぐさ以外あまり動かないのに、時折こんな姿勢をとります。 理由はわかりませんが‥

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好奇心が強い(私も同じですね)トンボのように感じます。
こちらが動かないなら、何度でも同じ葉に戻って来ます。 そして視線を返してきます。

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どう見ても360度の視界を持っていそうなのに、ちゃんとこちらを見返します。
多くのけものや鳥たちとは当たり前にしてきたことを、このトンボは私に返して喜ばせます。

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何度も戻って来るので、飛んでる姿が写せそうな気がしました。
1/400秒のシャッターでは少しも止まってくれません。 見かけよりその羽ばたきは速いようです。

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1/1000秒の置きピンでやっとこの程度。 巧みに獲物を捕らえる足の仕組みが分かります。

カワトンボの頃‥_e0070545_22071947.jpg
そして着地(着葉?)。 翅の淡色班が目立つのは、羽化から間もないそうです。
ほら、やっぱりこっちを見てる。 (そう感じるのは私だけでしょうか‥)


カワトンボ(属)は何度かの分類変更を経て、今は2種。
「全くの別種なのに屋外観察での同定は困難、ブログなどでの掲載ならば一様に
カワトンボとするのが妥当」というような内容の研究者の記事を拝見しました。
掲載のものはニホンカワトンボ、アサヒナカワトンボのいずれかになるのでしょうが、
ここではカワトンボの名称を使用しています。


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# by moraisan | 2022-06-07 13:26 | いのち | Trackback | Comments(2)
チューリップの木‥      ユリノキ (ハンテンボク)


一般和名はユリノキ。 
学名Liriodendron tulipifera にユリとチューリップの名を持つモクレン科、不思議な木です。

チューリップの木‥      ユリノキ (ハンテンボク)_e0070545_01050096.jpg
道幅も狭く、地元の人しか使わないような県道の傍にこの木は立ちます。
大きな木なのですが、根元が道から数メートル下にあるせいか、あまり知る人が多くないようです。

チューリップの木‥      ユリノキ (ハンテンボク)_e0070545_01045504.jpg
気に留めてほしくて説明する時、チューリップののような花が咲くと話します。
今も身近な人に折を見て話しますが、車移動が主流の土地柄‥ 気づいてくれる人は少ないようです。

チューリップの木‥      ユリノキ (ハンテンボク)_e0070545_01042949.jpg
コップ型の花はチューリップのようだし‥

チューリップの木‥      ユリノキ (ハンテンボク)_e0070545_01011325.jpg
3の倍数の花被片は、ユリ(Lily)のようです。
6枚を花びらに、3枚を萼のように飾ります。

チューリップの木‥      ユリノキ (ハンテンボク)_e0070545_01003225.jpg
枯れているのは昨年の花です。 多くの種子を風に任せた後、外側の種子片を残します。
多くの種子を飛ばすのに、実生の野生を見たことがありません。 発芽率は良くない木と言われています。

チューリップの木‥      ユリノキ (ハンテンボク)_e0070545_00594490.jpg
一斉に咲くのではなく、少しづつずらして開花するようです。
蕾から開花に至る過程を、わずかな空間に見ることができます。

チューリップの木‥      ユリノキ (ハンテンボク)_e0070545_00591756.jpg
樹皮の美しい木だと思います。 黒地に班を交える枝は印象的です。

チューリップの木‥      ユリノキ (ハンテンボク)_e0070545_01225850.jpg
高さ20mを越えていそうな木を支える幹は、通直で立派なものです。
この木の目通り辺りで、二尺丸(にしゃまる)を越えて三尺丸(さんじゃまる)に迫ります。
地方で違うかもしれませんが、丸太という時、尺(約30センチ)に達した木を呼びます。
(私が林業にに従事していた北海道ではそうでした。)

チューリップの木‥      ユリノキ (ハンテンボク)_e0070545_00580356.jpg
若い株立ちがずいぶん大きくなっています。
これだけ大きな木の周囲に実生はなく、この木はこうしていのちを繋ぐのかもしれません。

チューリップの木‥      ユリノキ (ハンテンボク)_e0070545_00572266.jpg
根元が道よりずいぶん下なので、近くに花を見られることがあります。
同じように見える花被片が、花びら様は先から外に、萼様は側から内に巻きます。
中央は数十が集まる雌しべ、最初は短かった雄蕊が今はずいぶん伸びています。
雄蕊はやがて花被片に沿うように開きますが、多くの花同様、自家受粉を避ける姿にも見えます。


その径が数センチ以上ある花は、そう多くはないように思います。
どんなに目を凝らしても、その仕組みを見切れない花を多くみてきました。
ルーペやカメラレンズの力を借りずに、手に取るように細部を見られる数少ない花です。

大きな花、多くの花なのにどこか控えめな花色。
花時期はもちろん、風にひらめく大きな葉、またその美しい黄葉、冬にも残る花様の種子片‥ 
ただ2種が知られるユリノキ(属)が、世界中に植え広められたのが分かる気がします。



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# by moraisan | 2022-06-03 19:58 | 山野草・樹木 | Trackback | Comments(6)
ふたつのヘビイチゴ‥  競う黄花たちと

歩く谷は少し静まり返っているように感じます。
すっかり葉を展開した木々が、暗い影を落としています。
春の花たちが終わったせいもあるでしょう。

花がないわけではありません。
ただ主役の座は木々たちに譲られた感じです。

そんな中で気を吐く、黄色い花たちです。

ふたつのヘビイチゴ‥  競う黄花たちと_e0070545_09195728.jpg
どこにあるかお分かりでしょうか? どこにでもあるオニタビラコです。
かなり背高くすっきり伸びるのが、この谷のものの個性に感じます。 

ふたつのヘビイチゴ‥  競う黄花たちと_e0070545_09182273.jpg
こちらの方が分かりやすいでしょうか?
春先の感じとは打って変わって、野趣を感じます。 初秋のヤマニガナのようです。


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花が小さいなら数で‥ そんな感じでしょうか?

ふたつのヘビイチゴ‥  競う黄花たちと_e0070545_09171723.jpg
谷の比較的日当りが良い場所には、ヒメヘビイチゴが群生します。

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1センチに満たない花を、夏草に負けまいと精一杯もたげているようでした。

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キジムシロやツルキンバイにとって代わるヘビイチゴです。

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めだつ花床は、もうその後の苺を思わせます。(食べられませんが)

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林道脇にジシバリが並ぶ場所がわずかにあります。

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少し抑えた黄色と、すっきりした立ち姿が好きな花です。
この谷では年々減っていますが、里の花なので消えていくのかもしれません。
気がつけば、鳴き始めたハルゼミにヒグラシが声を重ねて大合唱です。
臆したのか、この場所の常連、ヤブサメも声を潜めています。

静かだった谷はどこへやら‥  もう夏です。



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# by moraisan | 2022-05-30 11:21 | 山野草・樹木 | Trackback | Comments(4)
茂来山から‥    「その二」 

遅くなりましたが、前記事の続きとなります。

流れは右手にかわり、道は傾斜を増していきます。
かつては炭焼きが盛んだった森は、美しい二次林の森をつくっています。
往時の山人たちが、良く山を知り共に生きた証だと思います。

茂来山から‥    「その二」 _e0070545_05191008.jpg
美しい木肌の木が二本、寄り添うここは好きな場所です。
左が若いトチノキ、右側がシャラノキ(ナツツバキ)です。

茂来山から‥    「その二」 _e0070545_05190409.jpg
シャラノキは美しい花を咲かせる木ですが、樹高の高い木では気づく人も少ないと思います。
ふれずにはいられぬ樹皮ばかりでなく、見上げる新葉、秋の紅葉も美しい木です。

茂来山から‥    「その二」 _e0070545_05185355.jpg
少し進むと今度は三本、寄り添う木たちに会います。
太い一本がカラマツ(とても素性の良い天然カラマツ)、奥がトチノキ、手前がシャラノキです。

茂来山から‥    「その二」 _e0070545_05184915.jpg
三本の木々(ばかりではありませんが‥)が造り上げる美しい樹冠です。
この山に限ったことではありませんが、木々はこのように互いを支えるように生きています。

極相の林、人口の林が時に美しく目にうつったとしても、私はそれを森と言葉にするのをためらいます。
森は木々だけでなく、そこに営む鳥やけものたち、林床の草花、そこを訪れる虫たち‥
私には計り知れないものたちが、私に「森」という言葉を選ばせていると思います。
森には願いがあると思っています。 私には森で生きる力はありません。
ただ願いだけは共にありたいと‥ それこそが願いです。


茂来山から‥    「その二」 _e0070545_05184319.jpg
登り進んでいくと、やがてこの山に似つかわしくない景色に出会います。
2000年当時の事だと記憶します。 「森の巨樹たち100選」林野庁の企画です。
この樹に「こぶ太郎」という名を後付けしたのも、展望デッキを設けたのも私の住む町です。


茂来山から‥    「その二」 _e0070545_05363616.jpg
当時樹齢推定250年、樹高22m、幹周5.3m。 見事なトチノキです。
「森の巨樹たち100選」の選定後、この山この巨樹巨樹を訪ねる登山者は右肩上がりに増加しました。
折からの登山ブームも拍車をかけたと思います。


茂来山から‥    「その二」 _e0070545_05183170.jpg
トチノキへ近づくには登山道をそれて、沢筋に降ります。 (脇の緑はヤマトリカブトです。)
これがその道の様子ですが、いかがでしょうか。 落ち葉が形も留めぬほどに踏みしだかれています。
子供たちが小さい頃、この樹の傍でスケッチをしたりして遊びました。
沢筋に溜まる落ち葉は厚く、寝ころべば人ひとりを隠すほどでした。 その幹にふれることもできました。


この山に棲み暮らす人は皆無です。 
どんなに登山者が多い時でも、この山に棲む鹿の数には及ばないと思います。
にもかかわらず、日中その姿を見ることは殆どありません。
私は周囲の里山でも鹿道(けもの道)を辿ることが多いです。 
里山には鹿罠が仕掛けられていることも多く、皮肉なことに、けもの道が安全だからです。
その小さな蹄であっても道跡はつけます、とてもたどれぬ傾斜地では小さな崩落も起こします。
それでも人足が残すような、修復が困難なような痕跡は見たことがありません。
これは高山の岩稜よりは、このような里に近い山岳で顕著となります。
山は地殻の隆起だけではないことを、人足が大きく時に乱暴であることを、私たちは知らねばなりません。


空は薄曇り、谷筋はこんな日の方が明るいものです。
茂来山から‥    「その二」 _e0070545_05181782.jpg
それでも急に眼前が明るくなる時があります。
頭上低く、ハウチワカエデが光の傘をさしかけたからです。

茂来山から‥    「その二」 _e0070545_05172310.jpg
向かいの斜面にダケカンバの幹が目立ちはじめ、目指す木が近づきます。
標高は1400m程となります。 ちなみに茂来山の山頂は1717mです。


茂来山から‥    「その二」 _e0070545_05171808.jpg
これが私が会いたかった木です。 巨大なトチノキです。
登山道脇に立つので、足元ばかり見ていて気づかぬ登山者もあるようです。

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幹回りは前出の「こぶ太郎」よりずっと太く、樹齢もずっと重ねていることでしょう。

茂来山から‥    「その二」 _e0070545_05170426.jpg
両の腕を広げるようにつくる樹冠は大きく、長いところなら25mを越えていそうです。

茂来山から‥    「その二」 _e0070545_05165940.jpg
こぶの上にニリンソウが安心したように咲いています。
このトチノキの上では、多くのいのちが息づきます。

茂来山から‥    「その二」 _e0070545_05165591.jpg
コケ類、シダ類、顕花類、蔓性の木、菌類‥  それは「こぶ太郎」が子供にみえるほどに多様です。

茂来山から‥    「その二」 _e0070545_05281870.jpg
力枝にノキシノブが元気に着生しています。
ふだんノキシノブに会いに行くのは、ミソサザイの谷の石灰岩の露頭だったりします。

茂来山から‥    「その二」 _e0070545_05164454.jpg
この樹は無冠です。 「森の巨樹たち100選」でもなければ、山の神でもありません。
まだ町村合併がされる前、この山が隣町であった頃に教育委員会がまとめた冊子があります。
町内の50数本の巨樹を調査し編集されたその本には、茂来山からも8本が選ばれています。
まだ無名だった「こぶ太郎」も掲載されているのに、不思議にこの樹はないのです。

しかしこの木には古くから土地の人が呼んだ名前があります。
「大王トチノキ」がその名です。 知った時嬉しかったのを覚えています。

ここからは私の想像です。
この木はこの沢の多くのトチノキの親木ではないかと思っています。
もしかしたら「こぶ太郎」子供の一本かもしれません。 樹齢的にも最長老です。
この木は標高的にも一番上で、その先には並ぶような巨樹の存在がありません。
この木のやや下方に古い炭焼き窯の石積み痕が残っています。
山で木を伐る際に、山人は「山の神」を祀り許しと安全を願います。
私も林業従事者であった頃には、略式ながらそれに習いました。
この木はそうした伐採現場の上手にあったことから、「山の神」の一木とならなかった。
しかしながら、この沢を統べるような威容から「大王」と呼ばれ慕われたのではないか。

この木の前に立つと、「星の王子様」の物語が浮かびます。
星の上のバオバブではなく、この木自体が小さな星に重なります。



十分な時間を好きな木の傍らで過ごして、下ることにします。
下山は少し端折ります。 次の写真はすでに「こぶ太郎」を過ぎています。
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ジャニンジンが並んでいました。
似たような花は多くありますが、羽状に全裂する葉はこの種だけです。

茂来山から‥    「その二」 _e0070545_11072430.jpg
花だけだとこの通り、多くの花と重なります。

茂来山から‥    「その二」 _e0070545_11065918.jpg
ミヤマハコベです。 こちらも里のものに似たものが‥

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小さなナデシコ科の花はどれも良くにているものですね。
雰囲気の違いで気づく花ですが、気づかぬ人も多いかもしれません。

茂来山から‥    「その二」 _e0070545_11064845.jpg
少し花時期は過ぎていました。 サナゲイチゴです。
木苺らしくない葉が特徴的ですが、場所を選ぶのか多く見る花ではありません。

茂来山から‥    「その二」 _e0070545_11064149.jpg
花は1センチ程と小さなもの、その実も小さいです。
漢字だと「猿投苺」‥美味しくないのかな? 口にしたことはありません。

茂来山から‥    「その二」 _e0070545_11063128.jpg
エイリアンの顔のような葉がそこかしこに。
初秋の花時期には花にばかり目が行きます。 ミズヒキです。

茂来山から‥    「その二」 _e0070545_11062554.jpg
登山度を離れ林道に戻っています。
かなりお気に入りの花、ホソバノアマナが一株。

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この繊細な筆遣い‥ いかがでしょうか?

茂来山から‥    「その二」 _e0070545_16313822.jpg
あと一年は会えないと思っていたアカネスミレが一輪。
この一日はこの一輪だけでも悔いのないものになる、ほどの再会^^

茂来山から‥    「その二」 _e0070545_16312751.jpg
もうこの辺りは車止めのゲートが近い。
キバナハタザオです。 絡んでいるのはボタンヅル、夏の気配はそこまで来ています。

茂来山から‥    「その二」 _e0070545_16311744.jpg
アブラナ科の花はどれも良く似すぎるなあ‥ 止まるのはカメムシの幼生?です。
 幼子にだけでも名札を付けてほしいと思うのは‥私だけ?

茂来山から‥    「その二」 _e0070545_16310992.jpg
林道を下っていくと(登っている時もであるが)、大きな露頭の下に洞を見ます。
車だと気づかないだろうけれど、今は通れる保証はなく、皆手前で車を降りているようです。

茂来山から‥    「その二」 _e0070545_16303356.jpg
実はこの露頭はツツジが飾る場所でもあります。
ミツバツツジはすでに花を散らした後でしたが、ヤマツツジは始まったところでした。

茂来山から‥    「その二」 _e0070545_16302604.jpg
私は地学に明るくないので、この洞の成因はわかりません。
石灰岩質の岩から、鍾乳洞様の洞ではないかと思っています。

茂来山から‥    「その二」 _e0070545_16300273.jpg
その奥は暗くはかることはできません。
山清水か湧水か一年変わらぬ水位を溜めて、その水は濁ることがありません。

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あとは林道を下るだけの道。 薄曇りながら傾いた傾いた陽が影を落とします。

茂来山から‥    「その二」 _e0070545_16294542.jpg
陽を受けて明るかったのは、カラマツを登るツタウルシ。
秋には美しく染まってくれます。



とても長くなってしまいましたが、これで「茂来山から‥」の連作を終わりにします。
だいぶ端折って、ご紹介できなかった木々草花もありますが、それらはまた機会を得ましたら‥
このとりとめのない長い記事にお付き合いくださった方々には、感謝申し上げます。


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# by moraisan | 2022-05-27 13:02 | 自然 | Trackback | Comments(2)
茂来山から‥  「その一」

久しぶりに茂来山を歩いてきました。
前回の入山は2019年の11月、全国的に被害をもたらした台風の後でした。
茂来山も入山経路の林道が流失したりしているのを、当時確認しています。

茂来山は地方の独立した中級山岳であるのに、意外にも入山者の多い山となっていました。
文字通り人の足に踏み荒らされた状況は哀しく、以前の姿を知る身には辛いものでした。、
台風によって入山困難になったことは、むしろ歓迎する気持ちでした。
数年も人が入らなければ山は回復する‥ それが正直な気持ちでした。
それを願って、私自身も茂来山から遠ざかりました。

茂来山への林道の修復は意外に早いものでした。
近くの千曲川の河川修復にも2年の月日を要していたので、5年はそっとしておいて欲しかった。

その山の名を勝手にハンドルネームに借りる身、気を取り直して住む町の山を歩いてきました。

麓の集落から林道を歩き始めます。
この山に最初に入った30年程前なら通っていたバスも今はなく、この集落までは自転車です。

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歩き始めるとすぐ、道脇のフデリンドウに気づきます。

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ああ、茂来山にまた来たんだな‥ と思います。

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かがんで近づき‥

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いつの間にか寝そべっています。 ‥先が思いやられます^^

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やがて右手に深かった渓が近づき、道に沿うようになります。
まだ台風の爪痕は残りますが、山には想定内の事でしょう。

茂来山から‥  「その一」_e0070545_03285889.jpg
トクサが数株、背景の幹はミズナラです。
さして標高が違わぬ暮らす周囲はコナラが優先しますが、ここではミズナラです。

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縄文時代にも使われていたらしい、天然のサンドペーパー。
その触感を指先で確認して別れます。

茂来山から‥  「その一」_e0070545_03284456.jpg
滑(なめ)になっている辺りは急に明るくなります。
この渓は滑の他にも、落ち込みや小滝があったりと変化に富みます。

茂来山から‥  「その一」_e0070545_03283491.jpg
本流に流れ込む側流でさえ、これだけの流量があります。
この山の豊かさをつくっているのは紛れもなくこの水と、それを保っている木々たちです。

茂来山から‥  「その一」_e0070545_03282280.jpg
林道には車止めのゲートがあり、小広く開けています。
ゲート脇にキジムシロが明るい花を並べています。
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私は木はもちろんですが、花もほとんどを場所と共に記憶します。
近年すっかり怪しくなった記憶とは、別な領域があってほしいと願います。


以前はここまで車が入りましたが、今はそこまでの修復はされていません。
台風前にはここまで中型バスで乗り付けるツアー登山もありました。 
日本の山にはほとんど規制がありません。
集団に踏まれた痕は、山の自己修復の機会をすら奪います。 
そんな愚は、そろそろ終わりにしてほしいものです。
登山者には一度きりでも、ここにはその生涯をここで生きる多くの「いのち」があります。



茂来山から‥  「その一」_e0070545_03280216.jpg
やがて林縁に美しいハート型の葉の並びを見るようになります。
フタバアオイです。

茂来山から‥  「その一」_e0070545_03275695.jpg
この花は不思議なことに、完全に下を向きます。
葉の下に隠れ下を向く花には、匂いも密線もないそうです。

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つまりは虫がやってこない(呼ばない)ということです。自家受粉だそうです。

(花を見るために少しだけ傾げさせてもらってます)

茂来山から‥  「その一」_e0070545_03251818.jpg
多くの花は自家受粉を避けるしくみや仕掛けを持ちます。
その方が理にかなっていそうですし、自家受粉を選ぶなら両性花はなぜ? と思います。
雌しべ(柱頭)が6ッ本、取り巻くように雄蕊が12本‥? 私には無理でした^^;

茂来山から‥  「その一」_e0070545_03251481.jpg
先は行き止まりになる林道を進みます。
車の轍も確認できない道に、アカフタチツボスミレが咲いていました。

茂来山から‥  「その一」_e0070545_03250792.jpg
葉脈に沿って赤くなるだけで、ほとんどタチツボスミレです。
漢字で書くと『赤斑立壺菫』‼ ‥花はとても穏やかですが。

茂来山から‥  「その一」_e0070545_09400666.jpg
ツボスミレが小さな群落をつくっています。
ニョイスミレが一般的な和名のようですが、前者の響きが私は好きです。

茂来山から‥  「その一」_e0070545_09314811.jpg
花はスミレの仲間では最小の部類だと思います。
1センチほどでしょうか、なかなかあでやかな表情をしています。

頂上まで行くつもりはないのですが、どうしても会いたい木がありました。
こう立ち止まっていては日が暮れそうです。 少し歩を進めます。

林道を離れてわずか進むと、渓が細い流れになって戻って来ます。
この流れは地図上では本流筋ではないものの、その発端からすると源流と言っていいものです。
ひとまたぎの流れをまたぐと、いよいよ茂来山の登山道に入ります。

茂来山から‥  「その一」_e0070545_09313236.jpg
登山道の入り口付近を飾る花、ヤマブキソウです。
大ぶりの花を一、二輪つけるのですが(多くは一輪)、いきなり三輪咲が待っていました。
前記事にしたラショウモンカズラが寄り添います。

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期待通りの所に、思っている花がさいていること‥
花でも人でも、場所でも‥ 新しい出逢いよりそれを望むのだろうな。

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豪胆と繊細をくっつけたら、こんな花だろうか‥

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そろそろ里のスミレとはお別れです。
苔の上に一輪だと、まるで違う花のように見えます。 (タチツボスミレ)

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しばらくは緩やかな登りが続きます。
杉やサワラの古い植林(たぶん)を抜けると、この山本来の樹林帯となります。
下生えは勢いの良いシダが占めます。 残念ながら見分けられる種は少ないです。

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つかず離れず流れは続きます。

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一番多いシダはこのオシダだと思います。
コケやシダも自在に見分けられたらいいのですが‥ 旧知の前に立ち止るばかりです。

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道中の苔むす石の傍らにクワガタソウが一輪。
群れなす花より、ぽつんと咲く花に惹かれるのは性格のようです。

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よく見かけるオオイヌノフグリは同じゴマノハグサ科です。
二本の雄しべ、一本の雌しべの特徴はそっくりですが、野趣に勝ります。

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登山道には年中乾かない場所があります。ミズゴケの間にアカチシオダケ(たぶん)らしい小さなキノコ。
この先で流れをまたぐと、道はしだいに傾斜を増していきます。

会いたい木に届かぬうちに、記事ばかり長くなってしまいました。
ここで一旦記事を切りたいと思います。
続きは「その二」でまとめたいと思います。
よろしければ後日ご覧ください。


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# by moraisan | 2022-05-25 06:19 | 自然 | Trackback | Comments(6)