link‥  ニホントカゲ

  天候が変わるのはわかっていた。
  しばらく行けてない森に入るつもりが、入口を前にしてズミ(前記事)につかまってしまう。
  この花と再び逢うのは‥ 木の傍でゆっくり 珈琲と一本の煙草。 過ぎ去る時間に抗う 私のおまじない。

e0070545_0114011.jpg
  森の入口までの少し急な坂道はスミレたちが奥の時間を教えてくれる。
  最初がアカネスミレ、まだ日もなさそうなのに、ずいぶん花も葉も虫食いです。 森はカタクリの花を終えた頃だ。

e0070545_01284.jpg
  斜面に片肘ついて花を覗き込んでいたら、すぐ傍で横目でこちらを見ているのに気づく。

e0070545_537476.jpg
  この距離で最初に見つけたのが彼の方なら‥ たぶん大丈夫(何が?) 上体だけで後を追う。

e0070545_537482.jpg
  カサカサと大きな音を立てるから‥ 狩りの名手というわけではない。

e0070545_5381828.jpg
  それでも当人はなかなか真剣に楽しんでいるのだ。 狩りではなく 生きることを。

e0070545_5424362.jpg
  曇り空からの薄日でも、春の午後は温かいから彼は時々ゆっくり目をとじる。 見ている私も眠くなる。

e0070545_5383328.jpg
  もうレンズフードの先端は目と鼻の先。 もうただ地面の上の二人きり、もう どちらがどっちだっけね。

e0070545_5384673.jpg
  急ぐ風もなく4、5メートルも先にいったのが、また戻って来たのを見て立ち上がることにする。
  カメラの履歴を見ればこの間17分ほど。 この日つかの間だけれど 彼とのリンクが取れたような気がする時間。

e0070545_013343.jpg
  急に暗くなってきて、風も冷たくなってきた。 足元には好きなゲンジスミレも咲きだしている。

e0070545_0132866.jpg
  もう森を歩く時間はないな‥ 最初のアカネスミレに戻って撮りなおす。 その年の最初はいつも特別。

e0070545_0134472.jpg
  珍しいスミレではないけれど、好む場所ははっきりあるスミレだと思います。
  地上茎がないこと、側弁の根元に毛があること、カマキリ頭形の柱頭、僅かに翼のある葉などなど‥
  そんなことよりこの花の集いかた‥ これこそそがこの花らしく思えます。

  まもなく落ち始めた雨の中、帰り道。 気持ちばかりは小走りでした。


                          ※写真はクリックで拡大いたします。




    
[PR]
# by moraisan | 2016-04-28 17:14 | いのち | Comments(6)
ズミの花咲く‥

  強い花冷えもあったせいで、桜は例年なみの開花となりました。
  その一時期戻った寒気と季節を飛び越えた高温に、多くの花が時を同じく咲き急ぎました。

  まだ遅い桜が残るうちに、ズミも一気に満開の時を迎えてしまいました。

e0070545_171526.jpg
  里と森の境にある小さな畑の脇に、このズミはあります。
  あまり丈の大きくなる樹ではないのですが、幹の太さから、相応の時間を生きてきたように思います。

e0070545_1153652.jpg
  土地の人に聞いても、ずっと昔からあるということだけで、残されたのか植えられたのか定かではありません。
  ただ幹を分けて大きな樹冠をつくる様は、この樹らしく立派なもので、私はこの木の開花を楽しみしています。

e0070545_1224476.jpg
ズミと呼ばれる樹には変化が多いように思います。 この樹も山中で見るものとは花付きなどずいぶん違っています。

e0070545_123834.jpg
  エゾノコリンゴの方に近く見える花ですが、樹姿からは やはりズミだなあと私は思っています。

e0070545_1233197.jpg
  この花の香はよく甘いと例えられますが、私はむしろ青くさい 青年の汗のようだと思ったりします。

  だからでしょうか‥ 青年にもなりきれないまま早逝した息子のことを この花は思い出させます。
  それは感傷などではなくて、不思議な明るさを持ってよみがえるのが 私にはとてもありがたかったりします。



                          ※写真はクリックで拡大いたします。

[PR]
# by moraisan | 2016-04-25 02:17 | 山野草・樹木 | Comments(6)
故郷の花‥ 蝦夷蒲公英

  いくつかの地を転々としながら今日に至るが、気が付けば25年‥ この地が最長の地となりそうだ。
  
  故郷というものを思う時、もちろん育った家や家族、恩師や友人たちの顔も懐かしく浮かぶのだが‥
 それ以上に思い出されるのは、遊んだ森や草原、故郷の山や川や海、その上に広がっていた空だったりする。

  十八で故郷を離れ、少しは本気で植物(樹木)や動物(野鳥)の事を学びたいと思った時には、
 すでに故郷はもとより、この国は私の原風景に繋がるものの多くを失っていたように思う。 彷徨が始まる。

e0070545_1424644.jpg
  幼い日、あんまり当たり前に周りにあって、無造作に摘み取っては遊びにつかったエゾタンポポである。
  当時はそんな和名も知らなかったし、今では主流になった西洋タンポポなど見たことはなかったかもしれない。

e0070545_1431599.jpg
  理科という単元が好きでした。 周りを取り囲む世界の理(ことわり)を紐解いて いつも私を驚かせてくれた。
  花弁が五枚の多くの合弁花からなる集合花であること‥  花を仔細に見ることは、きっとこの花に教わった。

e0070545_1432949.jpg
 今、数種のタンポポが周りにある中で、故郷の蒲公英はそう多くはありません。
 記憶にあるほどの草丈もなく遠慮がちですし、色も淡いものが多いのは、交雑がすすんでいるのかもしれません。

  それでもこのタンポポを私は知っている。 それは後年しみついた薄っぺらな知識などではなく‥ 
                         僅かに確かな 故郷の記憶として。




                         ※写真はクリックで拡大いたします。




  
[PR]
# by moraisan | 2016-04-23 03:07 | 山野草・樹木 | Comments(8)
春の小悪魔‥ ハシリドコロ

  みずみずしい新芽が次つが顔を出す春は、山菜シーズンでもあります。
  普段は出会う人もないような場所でも、忙しそうに目を配らせて通り過ぎる人に会ったりします。

e0070545_138336.jpg
  毎年のように山菜による中毒が報じられるます。 その筆頭がこのハシリドコロです。

e0070545_144495.jpg
        確かに大きな芽生えは目立ちますし、手ぶらよりはと持ち帰って食べてしまうのでしょうか?

e0070545_1525692.jpg
  この草の持つ雰囲気は、私には 『食べてはいけないよ』 と言ってるようにしか見えないのですが‥

e0070545_1592759.jpg
  濃い紫の花は開くほど赤みを増して、野草というよりは園芸種の花を思わせたりします。
  下向きの花では目立ちませんが、花の内側は黄色くて、ちょっと毒っぽい?お洒落さんかもしれません。

e0070545_2101242.jpg
  花の中でおいしそうに花粉を食っているやつがいました。 顔しか見えませんがヒメハナバチの仲間かな??
  このハチの食事の様子を眺めていたら、何だか食べられそうな気が‥ あぶない、あぶない^^;

  
  早春にいち早く花を咲かせて、夏にはすっかり姿を隠してしまう。
  花の生活史からしたら、ハシリドコロも立派にスプリングエフェメラル(春の妖精)だと思います。
  盛りの頃にはめっぽう目立って多いので、あまり長くこの花の傍にいたことがなかったような気がします。

  葉が展開した時の草姿はもっと明るい感じで、食べられそうに見えるかもしれません。
  でも全草有毒で、触れた手で目などはこすらない方がいいようです。 罪のない小悪魔です、ご注意を^^


  

                          ※写真はクリックで拡大いたします。
[PR]
# by moraisan | 2016-04-21 03:19 | 山野草・樹木 | Comments(4)
強風の中で‥ オオヤマザクラ

  九州地方が大きな地震の災禍にみまわれました。
  いのちを落とされた方々には、無信仰の身で適切な言葉も選べないけれど‥ こころより哀悼の意を表します。
  惨状の中で生きていられる方々、多くを失われてお苦しみのことでしょう。 
  いのちがあって良かったと思える日が、一日も早く戻られますように。

e0070545_0102817.jpg
  

e0070545_0143410.jpg



  震災に追い打ちをかけるような雨風は、ようやく咲き始めたこの地の桜をも激しくゆさぶりました。
  花びらの展開時に強風が水分を奪ったからでしょうか‥ 花びらが傷つきあるいはよじる花が目立ちました。
   
                        これがこの春の記憶に残るだろう 私の桜。



  
[PR]
# by moraisan | 2016-04-19 01:22 | いのち
物語る花を求めて‥  堅香子

  同じ町にありながら‥合併前は隣町でした‥ この場所のカタクリを知るのは少し後になりました。
  保護地と聞いて気持ちがなえたこともありますが、それでも8年ほどの付き合いとはなりました。

e0070545_754433.jpg
  この倒木の間に顔を出した花の開くのを見たくて、珍しく離れたこの場所に二日続けて訪ねました。

e0070545_4573092.jpg
  ここはロープを張った保護地の手前で花も散在していますが、私にはずっとお気に入りの場所であったりします。

e0070545_503085.jpg
  急な斜面には朴の木が多く、その落ち葉をもたげて咲く花が目立ちます。

e0070545_532768.jpg
  ここからは保護地です。 少し変わった開花の様子の花に目が留まりました。

e0070545_543781.jpg
  ふつうはこのように花びらをほどくのですが‥ 花は一株に、また一輪に それぞれに見るべきものがあります。

e0070545_552646.jpg
  この花が開ききるまで とどまるのなら‥ 何か聞けそうな気がするのですが。

e0070545_562911.jpg
  この保護地(嫌な言葉です)とその周辺にはおそらく何十万株のカタクリがあります。
  ただ今は十数年とも二十年とも言われる総替わりの過渡期なのでしょう‥ 花は年々減っています。
  開花まで7、8年もかかるのに、この花の寿命は4、50年もあるのだと言います。
  ですから数年後から十年後には林床を花で埋めるのかもしれません。 私には今も多すぎるほどの花たちですが。

e0070545_571925.jpg
  古名の堅香子は『傾いた篭』からと‥ か・た・か・ご この名の響きのほうが私は好きです。
  篭に開いたら閉じることのない花ですが、条件がなければ途中で止めて、開花を何日でも待つ花でもあります。

e0070545_574661.jpg
  こうして見上げれば、何か語り掛けてきそうだと‥ ただそれを聴く耳が今も私にはないのだ。

e0070545_58837.jpg
  気に食わないロープの内になど踏み入らなくても、十分すぎる花たちに日はあっという間に傾いていきます。
  明日からは気温が下がるのを知っているのかな? この花は来た時と同じまま日が落ちる。



   この花に最初に出逢ったのはいつだったろうか‥ 
  昭和49年初版本の野草ハンドブック・1 春の花 (山と渓谷社)が今も手元にあります。
  もう背表紙も失われて殆どバラバラの頁には何か所もテープでとめた跡が残っています。
  その表紙を飾っていたのがカタクリ‥ 冨成忠夫氏の一枚の写真(著作も)がこの花との最初の出逢いです。
  この一枚の写真と出逢った瞬間から、私の世界に本当の意味で花が咲いたのだと 今も思っています。



                          写真はクリックで拡大いたします。

とっておきの?おまけ‥
[PR]
# by moraisan | 2016-04-14 00:30 | 山野草・樹木 | Comments(14)
田打ち桜‥ コブシ

  春の里山の明らかな春を告げるのは、コブシの花の真っ白です。
  山のあちらこちらに雪と見まがう白さで咲く大ぶりな花が、眺める山に戻る最初の色となります。

e0070545_5444348.jpg
  町内を走るローカル線の駅で3つ目、少し遠いこの場所のコブシに会うのは二年ぶりです。

e0070545_5451483.jpg
  遠く霞む八ヶ岳の雪はやはり随分たよりない。 川の水もおとなしくて、水不足が気がかりな春です。 

e0070545_5455437.jpg
  花では区別の難しいタムシバとは、花下の一枚の小葉で見分けます。 もっともこの地ではコブシだけですが。

e0070545_5461490.jpg
  香水の原料にもなるという花は良く香ります。 もし許されて小枝を手折るなら、さらにこの木を知るでしょう。

  この地にも25年。 当時お世話になった古老たちは、春になれば口々にこの花に作を占ったものです。
  花の多寡はもちろんのこと、やれ今年は(花が)上向きだ、横向きだ‥ そんな話を聞くのが楽しみでした。

  いつしかそんな会話も絶えて、私もこの花を話題にしなくなったけれど‥
  待ち受ける農作業は楽ではなかっただろうに、あの日、若やいで見えた古老たちの目が 今はとても懐かしい。


                        ※写真はクリックで拡大いたします。




  
[PR]
# by moraisan | 2016-04-11 06:37 | 山野草・樹木 | Comments(6)
たくましき妖精たち‥ 

  私の歩く森は平坦なところがほとんどありません。
  斜面を春の乾いた落ち葉に足をとられながら歩くのは、なかなか難儀なものですが、
  落ち葉をもたげて春妖精たちが咲き始めると、まず足の置き場から探さねば歩けなくなります。

e0070545_354439.jpg
  この時期は小さな沢底を歩きます。 もう斜面は歩くのがためらわれる花たちでいっぱいです。

e0070545_3244275.jpg
  アズマイチゲは春を約束する花です。 桜に遅れて大雪が降った年、この花は桜の後に咲きました。

e0070545_333092.jpg
  美しい花、可憐な花、造形の妙に驚かされる花などなど‥ 多くの花にこころ惹かれて来ましたが、

e0070545_3405882.jpg
  気品というのを花に感じるのなら、私はまず筆頭にこの花を挙げてしまうかもしれません。

e0070545_3473416.jpg
  時を同じくしてキバナノアマナが林床を飾ります。

e0070545_3571112.jpg
  この小さな野生のチューリップは実にしなやかで柔らかく、触れることがためらわれるようです。

e0070545_417429.jpg
  その同じ花が落ち葉を持ち上げ突き抜けて地上に出るさまには、時々ため息が出てしまいます。

e0070545_4254611.jpg
  最後にもうひとつ。 ヤマエンゴサクです。 より水辺を好むこの花は、この日も足元にありました。

e0070545_4391420.jpg

  淡い紫花が多いのですが、時折見せる鮮やかなブルーの花色は、故郷のエゾエンゴサクを思い出させます。

  さきがけたフクジュソウが種を結ぶ頃から、次々と咲き始める可憐なスプリングエフェメラルたち。
  この水の力だけで立ち上がって咲くような花たちは、見かけによらぬたくましい花たちであったりします。
  
  急な気温上昇にいつもより少し早く始まってしまいました。 ついていくのが大変そうな春の予感です。



                          ※写真はクリックで拡大いたします。

[PR]
# by moraisan | 2016-04-03 04:50 | 山野草・樹木 | Comments(12)
続・ハヤザキヒョウタンボク‥ 開花

  先日、この地味な小さな木の花を、何とかひとつの記事にしてみました。
  思いがけずこの花に何人もの方にコメントをいただきました。 ありがとうございました。
  拙い写真からはお伝えできることも少ないですが、開花した姿も見ていただきたいと思い掲載いたしました。

e0070545_11563016.jpg
  目立たぬからでしょうか? 花は短い時に揃えて咲きます。

e0070545_1157125.jpg
  上向きや水平につく蕾は色を失いながらやがて下向きに‥ 時の弧を描きながら開いていきます。

e0070545_1211652.jpg
  この木だけ先出のものと違います。 同じ森に私が三本知るうちで、一番背高い(1.5メートル程)一本です。

  どれも昨日の撮影ですが、この急な気温上昇では今日明日にも花の盛りを終えてしまう‥ そんな木です。



                          ※写真はクリックで拡大いたします。




  
[PR]
# by moraisan | 2016-04-02 12:27 | 山野草・樹木 | Comments(14)
一番花‥ ハヤザキヒョウタンボク

  ようやく里山が目覚め始めると、この小さな目立たぬ花が気になって来るのです。
  あまり広い地域にはないようで、この花の名前にたどりつくのに少し時間がかかったのを覚えています。

e0070545_229337.jpg
  もう十年近い付き合いなのに、少しも大きくならないようで、背丈は今でも一メートルほどの低木です。

e0070545_22141555.jpg
  見つけられることを拒むように咲く花もその木も、場所で覚えてなければ見失いそうにひそかです。
  この日もその下に首だけ突っ込んで寝ころんで見たりするのですが、どうにも捉えどころがない風です。
  多分同じこの木と花に切ったシャッターは1000回は超えているはずですが、写ってくれないのはこの春もまた‥

e0070545_22234048.jpg
  ハヤザキの名のとおり、葉に先駆けて咲くのですが、冬芽を守るようにその葉は長く残っていたりします。

e0070545_22283037.jpg
  下向きの花を二輪並べて咲く盛りには、少しは存在感も増すのですが、花の時間はとても短いものです。

e0070545_22362293.jpg
  一時間半ほども待つともなく待っていたら、ようやく一輪が蕾をほどいてみせてくれました。

e0070545_22403147.jpg
  桃色の蕊の色も翌日には失われます。 写せない花ほど立ち去りがたく、ただ傍にいて時が過ぎていくのです。




                          ※写真はクリックで拡大いたします。


[PR]
# by moraisan | 2016-03-29 23:00 | 山野草・樹木 | Comments(12)