私の森は花盛り‥  ヤマツツジ

  いつものように段丘斜面にうがたれた小さな谷をたどり、一番近い森に出る。

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 いつの間にか夏の繁りになった森は暗く沈み始めている。 その中段に一条の赤い帯が走っているのを見つける。

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  ああ、そうなんだ。 下の里ではそろそろ終わるヤマツツジが、この森では今が満開の頃なのだ。

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  そこに道がないのが森のあるべき姿。 でも道は幾本もあるのです。 けものみちに慎重に足裏を重ねて進む。

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  隠れるように咲く赤を、木漏れ日が秒の速さで塗り替えていくのを ただ見ている。 ひとり見ている。

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  けものみちは、彼らがそうしたのが当然なように、そんな確かさで私を木の傍につれていく。

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  森の時間は穏やかだ。 里ではすぐに白む花が、ここでは不思議なほどその色を保っています。

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  誰が植えたのでもない。 森が育んで咲かせた花が、今は暗い木陰を 礼するように飾っているのだ。

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 この花の前に立ちつくしたのは私ばかりではないな。 母鹿の足跡に消え入りそうな小さな蹄が寄り添っている。

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             時に花は 無彩色な木々の幹を 登るように立ち上がり‥ 

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  わずかに開いた空を 遊び飛び‥
  
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  落ちてなを くすんだ土を染めている。              今 私の森は この花の花盛りなのだ。



    不遜なことに、私はこの森を私の森だと思っています。
    この国ではどんな小さな地面でも、誰かの持ち物でないとならないので、この森も個人や町や入会やらで
    きっとパッチワークのように区切られていることは確かです。

    もちろん歩く森に私の所有するものなど、砂粒ひとつないのだけれど‥
    この森はいつでも私のこころの丸ごとを所有してしまう。   だからこの森は、まぎれもなく 私の森。





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  土地の老人たちは『まみ』と呼ぶ。 すっかり見なくなったが、あれはなかなか旨いのだと目を細める。

  アナグマのことである。 私もめったに逢わないのだけれど、遭うのはいつもこの辺りです。
  森の脇の細い林道でカメラをザックに収めて休んでいると、のこのこ森からおりて来ました。

  あまり耳も目も良くないのか、『おいちょっと』なんて言いながら、カメラを取り出している間もこっちを見てる。
  どうも道脇の細い流れに水を飲みに来たらしい。  この満開にギャラリーはお前さんとふたりかい‥
  そんな話をしながら、なんとなく撮れてしまったワンショット。



                           ※写真はクリックで拡大いたします。



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by moraisan | 2016-05-18 22:26 | 山野草・樹木 | Comments(10)
Commented by pallet-sorairo at 2016-05-18 23:28
先日、稲葉真弓さんの『海松(みる)』という本を読みました。
その中の『光る沼』という作品は、
ひょんなことから、別荘の女主人が獣道を伝ってひとりで林を切り開く話でした。
きょうのこの森のお話しを読んで、あの女主人はもしやmoraisanさんではなかったか、
などと思ってしまいました。
素敵な森ですね、ご一緒させていただいたような気持になりました。
ありがとうございました。
Commented by sternenlied at 2016-05-19 02:17
わあ、moraisanさんの大切な森を見せてもらって嬉しいです♪
これは黄昏時でしょうか。黄昏時に森の中にいると、周りの樹木たちが
一層ささやきかけてくれますよね。
週末に植物園でたくさんの種類のツツジを見てきたのですが、
野生に咲いているツツジの穏やかな高貴な美しさには敵いません。
写真を拝見しながら、花の前に立ち尽くした鹿の親子の面影を
思い浮かべてみました。

まみは土地の老人たちではなく、moraisanさんに出会って良かったですね^^
Commented by mimi-74 at 2016-05-19 06:45
こんにちは!
テキストを読ませて戴きながら、一枚一枚拡大して拝見していると
周りの雑音が消えて自分がmoraisanさんの森のけもの道を歩きながらヤマツツジを楽しみ
心が洗われた気持ちになります。
「まみ」さんはmoraisanさんのお人柄を見通しているのですねぇ。
まみさん「老人たち」に捕まらないでね。
Commented by moraisan at 2016-05-19 06:47
> pallet-sorairo さん、おはようございます。
稲葉真弓さんの作品は読んだことがなく、その内容も想像できないのが残念です^^;
ただ私にとってはこの森そのものが、そこに生きることのことのかなわぬ別次元の荘園であるかもしれません。
exciteの制約で、森の細かなディティールをお見せできないのが残念で、写真のアップにためらいもあったのですが‥雰囲気を感じていただけたなら幸いです。
Commented by moraisan at 2016-05-19 07:10
>mira さん、こんにちは。
時刻は昼下がり、午後2時頃からの一時間ほどです。
この後久しぶりにつながる森つたいに、先日ご紹介した天狗岩の頂きを目指しましたので、私としては短い滞在でした。
身近な森に足げく通うのは、たとえ想像の中にでも少しの確信を伴って、姿を思い浮かべられるものたちがあるからです。
『まみ』を活き活きと話した古老たちの姿はすでになく、『まみ』には悪いのですが、それが少し寂しかったりします。
Commented by moraisan at 2016-05-19 07:21
>mimi さん、こんにちは。
森はたいへん静かです。シカが遠くで落ち枝を踏みしだく音さえ聞こえてきますから。
みなさん『まみ』のことをご心配くださいますね。
大丈夫です。今は猟期も終えているし、この場の森を歩くのは人ならたぶん私一人です。
Commented by saheizi-inokori at 2016-05-19 10:53
アナグマ君には「俺」の森という考えもないのでしょう、羨ましくもあるなあ。
Commented by moraisan at 2016-05-19 17:33
>saheizi さん、こんばんは。
さてどうでしょう‥ この森の一角の地面の下には、先祖伝来受け継いだ地下トンネルが複雑にめぐっているはずです。
私はその入口(出口)のいくつかを知るのみですが。
この森ではテンにも勝るファイターです。俺こそが森だ‥くらいに思っているかもしれません(笑)
Commented by echaloterre at 2016-05-21 17:35
5月の優しい森の色ですね。
ほっとする穏やかな空気が感じられます。
私もマレで自分が所有しているものといったら、ほんの少しの農機具ぐらいですが・・・
"私のマレ"と呼んでしまいます。
マレにカシューと水鳥と空の鳥とカエルとミミズとネズミと川で跳ねる魚と植物と風の音と一緒にいるとき
不思議な一体感を感じます。
まみ、会ってみたいな。会えた時には「おまえさん、そこにいたのかい?」って声をかけそうです。
Commented by moraisan at 2016-05-21 20:19
>りんご姫さん、こんにちは。
私が森で過ごす時間は、りんご姫さんがマレで過ごす時間に似ているのかもしれませんね^^
ここの地下はまみのトンネル迷路、カシュー姫なら大騒ぎでしょうか? あんがい仲良しになるのかな^^


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