太古の壁を登る藤‥

  夏の到来を告げるように、山野に藤の色が増え始めました。
  周りがそもそも山なので、藤を見るのに事欠きませんが、それでも毎年気にしてやまない藤があります。

  以前拙ブログで記事にした時は、『懸崖の藤』としたものです。
  長くこの地に暮らすうちに少しは分かった事もあり、当時のタイトルの不適切さをが気になっていてました。
  近年少し衰退したかにを見えていたこの藤が、今年は見事な復活を見せてくれました。
  以前の記事の訂正も込めて、改めてご紹介したいと思います。
  

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  千曲川に面して立ち上がる大きな露岩があります。 地元では天狗岩と呼ばれています。
  脇を高原鉄道と銘打ったローカル線が走っていて、鉄道ファンがよく撮影に訪れます。
  ただ藤に関しては、真下が鉄路や私有地の田畑であることもあって近づけず、あまり注目されてないようです。
  私自身は地の理もあって、この岩下に立てますが、今度は見上げる大岩の全貌が捉えきれません。
  そんなわけで、多くの写真でのご紹介になりますが、この一枚目の写真から場所をご想像いただけたら幸いです。

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  大きく畑を迂回して、天狗岩の下に至ります。 日がだいぶ西に傾ぐ午後、岩自身が大きな陰をつくっています。

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  この場所の藤はまだ丈小さく手に届くほどなので、ゆっくり花やその香を楽しめます。

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  藤の登るのは垂壁に近く立ち上がっていてますが、藤以外にも果敢にその根を下ろすものたちがいます。

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  ヤマツツジが少ない彩りのアクセント、アカマツなどは盆栽の形(こちらが先ですね)で食いついています。

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  ウツギなどはあんまり遠慮がちに咲いているので、遠目にはまるで違う木かとみまがうほどです。

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  西側に周りこんでいけば、いよいよこの壁の藤の核心に近づきます。

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  この藤が壁を登った要因のひとつは、落石よけの長大な金属ネットです。 岩の西面は千曲川にほんのわずか、 
  そこに鉄路と狭い県道が走りますから‥ それでもコンクリートの擁壁でなくてよかったと思っています。

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  実はこの藤の根元には近づくことができません。 目測に過ぎませんが距離高さとも15m程の藤の幹です。
  子供の胴回りくらいは楽にありそうです。 高さ100メートルの岩壁の3分の2程まで登る藤です。 

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  ここで前記事の訂正です。 懸崖の藤ではなかったのです。 この藤はひたすら登る藤でありました。

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  そしてこの藤の登る天狗岩はひとつの大きなチャートであるそうです。
  チャートは良くある岩石ですが、ここは標高約800メートル地点、岩の頭は900メートルを越えます。
  チャートは放散虫などの骨格の堆積岩だといいます。 堆積するのは4,000から8,000メートルの深海底です。
  目の前の岩塊が推定一億年から、二億年前の微細な生物の骸が深い海の底に積んで出来た岩だというのです。

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  藤は自立する樹木ではないけれど、その根は地上にあり水を吸い上げています。
  この藤がこの岩壁を登りきる日が来たのなら、およそ100メートル。 世界のジャイアントにも肩を並べる高さです。
  
  何気なく見ている景色にも、この地球(ほし)の長い時間が刻まれていてる。
  そして今この瞬間も その上に軽々と(そう見せるほど)奇跡を行ういのちがあふれている。
 
  それをぼんやり眺めるだけで生きて来たけれど‥  こころの中で賛歌を歌おう、調子はずれでも 最後の日まで。

  


                       ※写真はクリックで拡大いたします。




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by moraisan | 2016-05-07 23:16 | 山野草・樹木 | Comments(16)
Commented by sternenlied at 2016-05-08 02:22
わあ、壮観ですねえ!
藤といえば、学校や植物園の藤棚しか馴染みがなく、
かろうじて立派な藤といえば奈良の春日大社で見た
藤ぐらいですが。こんな野生の藤、しかも堂々と
力強く岩に寄り添っている藤を見るのは初めてです。
目の前で見ると、さぞ圧倒される程の力強い印象でしょうね。
これだけ上るのにどれぐらいの歳月がかかったのか関心が引かれるところです。
落石よけの金属ネットにはっていったのですね。
人工的に加えられた物も時には貢献するものなんですねw

岩も太古の放散虫などの骨格の堆積から成っているなんて気の遠くなりそうな話ですね。
微細な生物の骸がこれだけの大きさの岩になるまで堆積したっていう歴史に
畏敬の念を感じるばかりです。この岩や藤の前に立つと、私の心も賛歌を歌いたくなるでしょうね。


Commented by moraisan at 2016-05-08 07:38
>miraさん、こんばんは。こちらは夜明けが近いです。
春日大社の藤、樹齢は2000年とか言われてますね。
植栽の藤だと、足利フラワーパークの藤が最古の藤‥樹齢144年‥とかで最近話題になりました。
私が初めて意識した20年程前はこれ程の広がりはありませんでした。
植栽の花の長い品種と比べても仕方ないのですが、フラワーパークの藤の枝の広がりが1000㎡、この藤の広がりはそれに匹敵するような気がします。
この岩の頂上に達する稜線は、私が一番通う森から踏み跡程度の道が繋がっているのですが、面白いことにそれを維持してくれているのは獣たちの往来です。
この下を走る鉄道の開通時期からすると、金網の敷設は80年前以上には遡ることはないですから、この藤が登ったのは比較的近年だと思います。
そんな人の歴史も、藤の寿命も、この岩にしてみたら瞬きの間のできごとなのかもしれませんね。
Commented by pallet-sorairo at 2016-05-08 09:04
おはようございます。
今頃の山へ行くとヤマフジがきれいなのを思い出しました。
お天気が良ければ、明日にでもどこかの山を歩きに行ってみたいと思いました。
で、「懸崖の藤」ですが、「懸崖」は「切り立った崖」という意味のはずなので
タイトルとして不適切ということはないのではありませんか。
「懸崖の藤」は「懸崖にある藤」と私には読めますが…。
それにしてもみごとな藤ですね。
この季節の小海線沿線、素敵でしょうね~。
Commented by moraisan at 2016-05-08 09:38
> pallet-sorairo さん、おはようございます。
小淵沢から入ってくると、この辺りまでが高原鉄道らしい雰囲気かなと思います。この先に行くと徐々に沿線から山は遠のいていき、浅間山が近づいて来るしだいです。
以前記事への温かいコメントありがとうございます。
ただ記事中で「懸崖仕立て」としてしまったのが、少々気になっておりました。
そろそろ高みが恋しい頃となりましたね。また山からの記事、楽しみにしています^^
Commented by saheizi-inokori at 2016-05-08 09:45
藤→不二→不死と連想する壮観です。
チャートのことも初めて知りました。
Commented by namiheiii at 2016-05-08 10:05
1億年前の海底の隆起、気の遠くなるような話ですね。グランドキャニオンの断崖を思い出しました。
ヤマフジは車や列車の窓外に見るだけでしたので、ここで詳細にご紹介いただき有難うございます。藤の繁殖力を考えるとこの藤が頂上に到達するのはそう遠くの未来ではなさそうですね。やがて町おこしの観光スポットになるかもしれません^^;。
Commented by moraisan at 2016-05-08 10:14
>saheizi さん、おはようございます。
与えられた場所で、これだけ精一杯に咲く様は見事ですね。
近年は草花木々の根を下ろした場所に関心をもちますが、師も得ず向き合ってみても、岩石は難しくて困ります^^;
Commented by moraisan at 2016-05-08 10:29
>なみへいさん、おはようございます。
グランドキャニオン、一度は見てみたかったなあ。
この地方にはヤマフジは分布がないようで、これはいわゆるフジ(ノダフジ)になります。
なみへいさんのお住まいの辺りなら、両種が見られるかもしれません。
Commented by 74mimii at 2016-05-08 14:26
こんばんは!
今朝(日本時間の8日午前1時ごろ)伺い天狗岩の見事な藤に見とれました。
でも、それ以上に心引かれたのは、天狗岩が「チャート」である事でした。
一億年から二億年。想像も出来ないくらいの年月をかけて出来た岩。
今日は、チャート、人間の存在の小ささ、その人間がますます傲慢になって行く事などを考えていました。
何時の日か、人間はこの地球から自滅すると思っています。
でも、このチャートの天狗岩はここに居続けますよね。
前にmoraisanさんがお仕事の途中にある石の事をお書きになった時「登ってみたいな」と思いましたが・・・
今日は「天狗岩に逢いたい」と思いました。
日本を訪れる事はないと思いますが、こちらへ時々伺って天狗岩と力強い藤のお花を見せて戴きますね。
Commented by moraisan at 2016-05-08 15:02
>mimi さん、こんばんは。
大きな震災や原発事故を経験したはずのこの国に、一縷の望みを持ったのですが、いよいよ狂ってきています。
アメリカでもとんでもない大統領候補に支持が(一部でしょうが)集まるなど、仰るように遠からず自滅すのではと危惧します。
この岩の上に出ると八ヶ岳も気持ちよく遠望できるのですが、人間で歩くのは私くらいの踏み跡は年々険しくなっていく(体もですが^^;)ようです。
この藤の勢いを見ていると、どんな人工物もいずれ自然が呑み込んで、本来の姿に返していくのだろうな‥そんな事を思います。
Commented at 2016-05-08 16:09
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by moraisan at 2016-05-08 17:57
>鍵コメさん、ありがとうございます。
了解いたしました。
Commented by ironsky at 2016-05-08 19:27
こんばんは。
急斜面に咲く藤の花、見事ですね。
こういうのを見ると、藤棚で咲く姿は「軟弱だー」って思ってしまいます。
まあ、それぞれ良いところがあるんですけど。
Commented by moraisan at 2016-05-08 20:03
> ironsky さん、こんばんは。
確かにそうですね。 自然を破壊しては模倣を繰り返す、作ってはそこに経済のものさしを当てる。
これでは何も見えないだろうし、失うことの多いだけになってしまうような気がします。
Commented by echaloterre at 2016-05-10 02:04
山を登って行く藤、力強さを感じますね。
我が町の周りには山はありませんが
大きな木や建物の壁を上って行く藤を見かけます。
我が町の色々な藤について紹介する記事を書くときに
moraisanさんのこの記事のことも紹介させてくださいね。

ライラックの葉っぱ、さっそく齧ってみましたよ!
葉っぱの柔らかさがおいしく感じるように思えた瞬間、
苦みがやってきました!
でも、心地よい苦味でした。
胃腸だけでなく、身体全体がシャキッとしたような気がしましたよ♪
Commented by moraisan at 2016-05-10 18:34
>りんご姫さん、こんにちは。
半分は金網を頼りに登っているとはいえ、冬の強い西風や、夏の日差しにさらされて、なかなか過酷な壁だと思っています。
それなのにその色はそんなことを微塵もかんじさせないのですから‥たいしたものです。

ライラック試されましたか^^/ 優し気なハート形の葉には棘はないけど‥苦いですよね。


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