物語る花を求めて‥  堅香子

  同じ町にありながら‥合併前は隣町でした‥ この場所のカタクリを知るのは少し後になりました。
  保護地と聞いて気持ちがなえたこともありますが、それでも8年ほどの付き合いとはなりました。

e0070545_754433.jpg
  この倒木の間に顔を出した花の開くのを見たくて、珍しく離れたこの場所に二日続けて訪ねました。

e0070545_4573092.jpg
  ここはロープを張った保護地の手前で花も散在していますが、私にはずっとお気に入りの場所であったりします。

e0070545_503085.jpg
  急な斜面には朴の木が多く、その落ち葉をもたげて咲く花が目立ちます。

e0070545_532768.jpg
  ここからは保護地です。 少し変わった開花の様子の花に目が留まりました。

e0070545_543781.jpg
  ふつうはこのように花びらをほどくのですが‥ 花は一株に、また一輪に それぞれに見るべきものがあります。

e0070545_552646.jpg
  この花が開ききるまで とどまるのなら‥ 何か聞けそうな気がするのですが。

e0070545_562911.jpg
  この保護地(嫌な言葉です)とその周辺にはおそらく何十万株のカタクリがあります。
  ただ今は十数年とも二十年とも言われる総替わりの過渡期なのでしょう‥ 花は年々減っています。
  開花まで7、8年もかかるのに、この花の寿命は4、50年もあるのだと言います。
  ですから数年後から十年後には林床を花で埋めるのかもしれません。 私には今も多すぎるほどの花たちですが。

e0070545_571925.jpg
  古名の堅香子は『傾いた篭』からと‥ か・た・か・ご この名の響きのほうが私は好きです。
  篭に開いたら閉じることのない花ですが、条件がなければ途中で止めて、開花を何日でも待つ花でもあります。

e0070545_574661.jpg
  こうして見上げれば、何か語り掛けてきそうだと‥ ただそれを聴く耳が今も私にはないのだ。

e0070545_58837.jpg
  気に食わないロープの内になど踏み入らなくても、十分すぎる花たちに日はあっという間に傾いていきます。
  明日からは気温が下がるのを知っているのかな? この花は来た時と同じまま日が落ちる。



   この花に最初に出逢ったのはいつだったろうか‥ 
  昭和49年初版本の野草ハンドブック・1 春の花 (山と渓谷社)が今も手元にあります。
  もう背表紙も失われて殆どバラバラの頁には何か所もテープでとめた跡が残っています。
  その表紙を飾っていたのがカタクリ‥ 冨成忠夫氏の一枚の写真(著作も)がこの花との最初の出逢いです。
  この一枚の写真と出逢った瞬間から、私の世界に本当の意味で花が咲いたのだと 今も思っています。



                          写真はクリックで拡大いたします。








  同じ町にありなが列車で3駅、そこから徒歩で1時間。
  普段の花たちとの付き合いも極端に局地的な私にとっては、大遠征?です。
  
  このカタクリの自生地は周囲が殆ど入会林であるのですが、急峻な斜面は手つかずの自然林です。
  細いながら枯れることのない小沢もあって、たどる道は出逢いも多くなかなか楽しかったりします。

e0070545_23483642.jpg
  ひとつは鳥たちが多いこと。 この日もこの標高では珍しいコマドリに逢いました。 見えますか^^:
  この山域に入ると気温は数度は下がるので、彼女(たぶん?)が気に入って棲みつくと嬉しいのですが。
  ほかにもヤマシギやヤマドリなど、里から離れた鳥たちとよく出会えます。

e0070545_05424.jpg
  そしてけものたち。 これも小さくて分かりずらいですが‥ キテンです。
  この場所で足跡は見てきたものの、しかもこんなに明るいうちに出会えるとは思いませんでした。

e0070545_0123844.jpg
  急な斜面を黙々と登っていくので、思わず声が出ました。 「おーい」 そしたら振り向いてくれました^^
  あまり目はよくないのでしょうか? 沢を挟んで数秒こちらを見たのは彼ららしい好奇心からでしょう。

e0070545_0192873.jpg
  しなやかに倒木や岩を乗り越えていく後姿を見送りながら、決して人にはつくれない豊かさを思うのでした。
    
[PR]
by moraisan | 2016-04-14 00:30 | 山野草・樹木 | Comments(14)
Commented by saheizi-inokori at 2016-04-14 10:26
どきどきする物語をありがとう。
まだどきどきしています。
Commented by namiheiii at 2016-04-14 11:09
その森をこよなく愛し深く知り尽くしたmoraisanさんならでの思いを珠玉の写真とつぶやきで伝えてくれる。こんな世界があったのだと改めて深く感動しています。
Commented by sternenlied at 2016-04-14 14:22
開花した花の美しさだけでなく、ゆっくりと花びらがほどかれて開花していく過程の美しさをmoraisanから教えられたような気がします。

とっておきのオマケのコマドリは直ぐに分かりましたよ。moraisanが出会ったコマドリは彼女なんですね^^ 私も昨日運河に沿って歩いていたら、直ぐ前の低い位置をさっと小さな小鳥が横切っていって、木の枝に留まった姿を見ると、コマドリでした。彼女だったか彼だったか分かりませんでしたが(笑)それにしてもキテンの愛らしいこと! 振り向いた顔や急な斜面を上っていくモコモコした背中がかわいい! 散策中のいろんな生き物との出会い、楽しいですね。
Commented by moraisan at 2016-04-14 19:53
>saheizi さん、こんばんは。
わくわくするのが心なら、どきどきするのはいのちでしょうか。
互いのいのちだけ、見つめて生きられたらと思います。
Commented by moraisan at 2016-04-14 19:57
>なみへいさん、こんばんは。
過分なお言葉です。 でも、いつも励まされてきたように思います。 重ね重ね感謝いたします。
Commented by moraisan at 2016-04-14 20:16
>mira さん、いつもありがとうございます。
私が花たちに教えられたことです。 少しでもお伝えできたなら嬉しいです。
時にはこの自生地を訪れる人にも会いますが、何を期待してこられたのか‥膝も折らずに過ぎてしまう方が多いです。
コマドリは雌雄良く似ていますが、顔のオレンジがやや狭く淡いこと、背の褐色が強いことで見分けてよいと思います。
遠く飛来したコマドリは、翼を忘れたようによく走り、こちらを遊びに誘うようでした^^
これじゃあ帰れなくなるよ‥と視線を上げた先にキテンの姿がありました。
Commented by echaloterre at 2016-04-14 21:29
私も同じ春の花の野草ハンドブックを持っています!
何年度版かは書かれてませんが、moraisanさんのものよりはずっと後のものです。
でも、表紙はカタクリ♪
私もカタクリの花が好きで、いちばんたくさん見たのは、武甲山でしたが
大学時代から山へ登っているので、何度カタクリに会ったかな~。
9枚目のように面と向かったことはなかったな・・・
鳥の声が聞き分けられるmoraisanさん、きっとカタクリともひそひそ話をしていたに違いないと思いますが
大切な会話、心の中にしまってあるんですね。(*‘∀‘)

オレンジ色の顔のコマドリ!見えました。
日本のコマドリを見るのは初めてです。
こちらには英名ロビンと呼ばれるヨーロッパコマドリがいて
とても人懐こくて、散歩の途中でよく顔を出します。
会うのは冬場です。
森や花や動物、ほんとに大事にしたいですね。
私が登ってた頃は、ニホンカモシカに会うこともありましたが、今は鹿が多いのは聞くけれどニホンカモシカはどうしてるかな。
Commented by moraisan at 2016-04-14 22:38
>りんご姫さん、こんにちは。
武甲山、懐かしいです。私も二度、学生時代に登りました^^

花や木々には一人とひとりでありたい思いが強いです。
そのせいかはわかりませんが、いろんなひとりと出逢います。
私の住む地はニホンカモシカには少し低いのですが、ひょっこり現れたひとりとの出会いを記事にしました。
震災の年のことでもあり、この地にも原発事故の放射能プルームが届いていたので胸が痛みましたが‥
よろしかったら彼にお逢いください http://poran.exblog.jp/14732027/

メルルがアムゼル! わお、思わず声がでましたよ(^^♪
Commented by pallet-sorairo at 2016-04-14 22:40
ああ、moraisanさんとご一緒させていただきたかったなぁと
心の底からそう思います。
カタクリの表紙のハンドブック、私もとても懐かしいです。
Commented by moraisan at 2016-04-14 23:06
> pallet-sorairo さん、こんばんは。
やさしいお言葉をありがとうございます。
ただ私は落ち葉や土にまみれて這いつくばってる‥傍から見たら相当おかしなやつですよ^^
Commented by PochiPochi-2-s at 2016-04-14 23:54
こんばんは。
初めてコメントさせていただきます。

カタクリのさまざまな花の写真を見てると、
何年か前絵の教室からスケッチに行ったときのことを思い出しました。
先生が密かに見守ってきたカタクリの群生地です。
少しでも情報が漏れると、たくさんの人がやって来て、
その中にプロの園芸店の人たちも混じっていて、
あっという間に根こそぎになってしまうと言ってました。

後にも先にも、この群生地に行ったのは、このときたった
一度だけでしたが、スケッチもほどほどにカタクリの花
ばかり見ていました。写真にもあるように、咲き始めから
花びらがくるっと上に巻き上がるまで。じっと見入って
ました。
花びらの中の模様もじっと眺めましたよ。

ごくフツーに、カタクリの花が見れるとは、しあわせですね。
Commented by moraisan at 2016-04-15 00:49
> PochiPochi-2-s さん、はじめまして。
咲き始めから花びらがくるっと巻き上がるまで‥ 一日の内に見られたのなら、きっと良い条件でしたのでしょうね。
私の訪ねるカタクリたちは、どれも日当りが良いとはいいかねるので、花びらが解け始めてから三日以上はかかるようです。
一枚目のカタクリも前日にはだいぶ開いていたのを待ったのですが、翌日にようやく篭の開きになりました。
『ごくフツーに』の意味は解しかねますが、私はこの花が大変好きですし、咲く春の日を待って訪ねます。
Commented by PochiPochi-2-s at 2016-04-16 09:00
おはようございます。
『ごく普通に』という言葉が誤解を与えたかもしれません。
ごめんなさいね。

カタクリの花を見たくてもなかなか見れない現状があります。
その中で、この花が咲くのを待ち望み、咲き出す頃に「見たい」
と思えば見に行けるという特別いい環境にあるという意味だったのですが…
いまは「カタクリの花があの場所にある」というような情報が流れると、
次の瞬間すべて根こそぎに持ち去られてしまうような状態です。
関西では。残念です。
Commented by moraisan at 2016-04-16 11:00
>PochiPochi-2-s さん、おはようございます。
重ねてのコメントありがとうございます。
私のほうこそ誤解を与えてしまったかな? であれば、ごめんなさいね。
私にとって花も木々も、それはその場そのものです。
ですから、それが持ち去られたり、あるいは庭先に植えられているのを見るのはつらいものがあります。
少しふれましたが、ご紹介したカタクリのいくつかは保護と称して、鹿よけの網や人よけのロープがめぐらされています。
私はこういうおせっかいを好みませんし、意味のないことだと思っています。
以前暮らした北の地ではカタクリは山菜として摘まれましたし、私もその豊かさを懐かしく思い出します。
春に歩いてこの花を訪ねられる私は、確かにしあわせかもしれません。でも裏を返せば、花たちが季節を教えてくれるような場所でしか 生きていけないだけです。


<< 強風の中で‥ オオヤマザクラ 田打ち桜‥ コブシ >>