異邦人‥  ヤマゴボウ

  今にも降りだしそうな夕刻。 空が見えないほどに樹冠がせめぐこの季節、森は暗く沈んでいます。
  
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  その仄暗い空間に異国由来の大きな株は、静かに鎮座しているようでありました。

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 その丈も1メートルは超えてありましょうか‥ 身の丈に近いものと向き合うことは、人とのそれと似ています。

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少しはは知ってるつもりの森にあっても、この姿は異形。 咲きながら立ち上がる花序は30センチほどにもなる。

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  その姿に歩み寄らされてしまうのは、その花の美しい葯(花粉嚢)の色にあるかもしれません。

  どういうわけなのか不思議なのは、いつも葯を残すのが花序の新しい花の一段ばかりであることです。
  それは誰かが急いで持ち帰ったというように、きれいさっぱり消えてしまっているのです。







中国の産だというこの大きな草丈の花は、人が持ち込んだのは確かなようです。
北米原産のヨウシュヤマゴボウがあちこち見受けられるのに比べ、この花は滅多に見ることがありません。
私の歩く狭い範囲では、ただ二株が尾根を挟んだ別々の森に見られるだけです。
いずれの場所も昼なを暗い場所ですが、その根は多年を生き抜くようで、いつも同じ場所で見られます。

山菜として売られる山牛蒡(モリアザミ)は全くの別種ですし、こちらのヤマゴボウは有毒でもあるので、
やはり前者の名前(商品名?)は一考したほうがいいと思ったりします。

毎年この時期になると、異邦由来の草花が取り沙汰されるのを苦い思いで見聞きします。
在来の植物群を保護するため‥と言うようなのが大方の理由のようですが、何やら良いことでもしているように
子供たちまで巻き込んで、根扱ぎにしているような報道映像などは、私には醜悪にしか見えません。

そんな暇があるのなら、千も二千もとは言わないけれど、身近なところに咲く花の百や二百を易しく説いてほしい。

人の営みが一日に数十もの種を滅ぼしているらしいのに、それが生物の多様性を語るなど笑止ではあるまいか。

森のことは森が決めればよいのだと私は思う。 
はるか昔、異邦から人に運ばれたこの草は、食用にも薬用にもされて、もっと近くにあったそうな。

今、訪れる人もない森の暗がりに、この大きな草株が静かに花を咲かすのは、もう人の計りごとの手を離れている。
  
      森はこの異邦人のいのちを奪わなかったし、ここに許したのだと。   ‥私はそう思う。




                        ※写真はクリックで拡大いたします。

  

  


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by moraisan | 2015-06-26 22:44 | 山野草・樹木 | Comments(12)
Commented by saheizi-inokori at 2015-06-26 22:55
生態系を破壊するなんていったって常に変化し続けてきたのですものね。
Commented by moraisan at 2015-06-26 23:07
>saheizi さん、こんばんは。
確かにそうですね。私たちにできることは、その中で私たちもまたその中で共に生きているとことを、もっと意識することかと思います。
Commented by pallet-sorairo at 2015-06-26 23:35
 >森のことは森が決めればよいのだと私は思う。 
同感です。

最初の写真を見た途端、
ヒトリシズカ?あれっ違う??!なんて思ってしまいました。
Commented by moraisan at 2015-06-27 07:15
>pallet-sorairo さん、おはようございます。
倒木の上のコケに始まって、空を覆う木々に至るまで‥ 
小さい森をいくつかつなげば、水中から上空までの空間におおよそ全ての命の姿を私は見ます。
それはまるでこの地球(ほし)の縮図のようでもあります。

ヒトリシズカとはだいぶ大きさが違いますが、もしかしたらこちらの佇まいの方が、静かであったりするかもです^^
Commented by namiheiii at 2015-06-27 12:04
本物のヤマゴボウを初めて見ました。堂々たる風格ですね。それでいて花は小さく可愛い。一列だけに葯がつくのも面白いですね。それが合理的なのかも知れません。森の番兵のようです。
Commented by 74mimii at 2015-06-27 13:57
こんばんは!
私は小柄なので、この見事な植物の前に立ったらどんな気持ちになるかしら・・・
そんな事を考えました。
威厳のある全貌の中に親しみ深い綺麗なお花と柔らかそうな大きな葉。

当地でも外来種の植物が州立公園などに入って来て
「自生植物を守る会」の人たちがその除去に力を注いでいます。
私は何処かからやって来た植物の間に自生種の花が咲いているのを見るのが好きです。
何処から来たのか色々想像するのも楽しいのですし
不思議な事にお互いが昔々からそこにあったように調和していて見とれます。
Commented by moraisan at 2015-06-27 16:18
>なみへいさん、こんにちは。
私も最初の出会いでは戸惑いましたが、異邦からのものではないか?とは思ったしだいです。
花からご想像がつくと思いますが、たくさんの実を結びます。
それなのにこの花が増える様子もなく、ただ森の一隅に控えるのは‥『番兵のよう』に‥あるべき森の姿なのかもしれません。
Commented by moraisan at 2015-06-27 17:03
>mimi さん、こんばんは。
人が短い時間と狭い空間しか認識も想像もできないものなら、まず私たちはそのことを認めることだと思います。
噴火や隆起で新たな島が今も生まれているし、そこにもいずれは海鳥や風が種を運ぶのだと思います。
千の森があったのなら、そこには千の植物史、生物史があるのだし、おそらくその一つも人は明かせないことでしょう。
いささかそこに不用意に関わり過ぎたのだと気づいたのなら、正すべきは人のこれからの行いにはあるとは思いますが、審判などは森に任せるべきだと思います。

在来種と外来種が共存調和を保っている光景は私の周りでも普通に見受けられます。
この地でのわずか20数年の時間ですら、消えていったもの、新たに見るようになった動植物が少なからずあります。
残念ながら、消えた方の原因は全て人によるものです。
Commented by fusk-en25 at 2015-06-28 01:21
森や野原にブルトーザのような機械が入って
地を均すと翌年、ポピーや矢車草 アリッサムや忘れな草のような園芸種の花が一面に咲きます。機械の車輪に種がついてきたのかと想像もしたのですが、その翌年にはまたほとんどの花が消えて無くなる、そんな不思議な現象を度々見ました。
植物は人間より早くから存在して、それを食べることによって人間が生かされてきた。ことをつい私たちは忘れてしまうのでしょうか?
Commented by moraisan at 2015-06-28 07:59
> fusk-en25 さん、おはようございます。
ある日突然のように、見慣れぬ草花が席巻して風景が一変してしまう‥ 私とてショックです。
集落周辺ばかりではなく、デリケートな高地高山域では更に深刻な問題であることも確かでしょう。
それでもです。私たちは立ち止り、己の行動を振り返る時間を、取り巻く世界を見つめる時間を惜しむべきではないでしょう。
Commented by nenemu8921 at 2015-07-02 22:55
たいへん珍しい植物を次々と見せていただき、驚き、嬉しく思っています。
以前、ヤマゴボウを調べていたとき、画像は薬用植物園のものしか、ヒットしませんでした。
自生しているヤマゴボウはかなり珍しいものだと思いますが、ご当地では、数多くあるのでしょうか?
また、この葉は紅葉するのでしょうか?
ご教示いただけたら、嬉しいです。
Commented by moraisan at 2015-07-03 03:46
>nenemu さん、おはようございます。
私の行動範囲は大変狭くて、ほとんどが1キロ円内です。
その中さえくまなく歩くことが出来ないまま、季節が過ぎていく感じです。
書いたように、その狭い世界でこの花を見るのはただ2か所でして、もう一方を先日訪ねましたら、そちらは少し離れて新たな2株を見ましたが、どちらもまだ小さなものでした。
写真の株は正確には二株が並んでいて、この姿を見せています。
多くの実を結ぶのに、20数年の時間の中の変化はそれだけです。
紅葉と聞かれて、その時期のこの草の姿を思い出せない自分がいます。
草紅葉というのもありますが、紅葉は基本的に木本のものですし、この大ぶりな柔らかい葉では少し無理な気がします。
秋の日にはもう少し気を付けて、確かなお返事ができたらと思います。
根は多年のようですが、地上部は毎年新しいものになります。


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